私たちは、人生において物事が計画通りに進まないとき、深い苦しみを感じます。
昇進できなかった、大切なものを失った、病気になったなど、「うまくいかない」と感じる出来事は避けられません。
エックハルト・トールの教えは、この苦しみの原因は出来事そのものにはなく、内なる「抵抗」にあると説きます。
心の平安を得る鍵は、この抵抗をやめ、「いま」という瞬間をあるがままに受け入れる勇気を持つことなのです。
うまくいかないとき、私たちは「抵抗」している
現実を否定する心の反応
うまくいかない状況に直面すると、心の中には「こんなはずじゃない」「なぜ自分だけこんな目に遭うのか」という思考が湧き上がります。
この思考は、現状を否定し、苦しみをさらに強めてしまいます。
不満を言うこと(文句を言うこと)は、必ずすでにそうであるものを拒否していることを意味し、ネガティブなエネルギーを発します。
苦しみは“出来事”ではなく“抵抗”から生まれる
トールによれば、出来事そのものは人間を不幸にするパワーを持っていません。
人間を不幸にしているのは、他でもない自分自身の思考なのです。
苦しみはすべて、エゴがこじらせたものであり、その根本原因は、すでにそうであるもの(現実)に対する心の抵抗にあります。
人生で起こる出来事が原因だと考えるのが一般的な見方ですが、トールは、苦しみを生むのは現実そのものよりも、「起きたことを受け入れたくない」という心の姿勢だと指摘します。
抵抗とは「いま」に対する無意識のNO
抵抗とは、「いまという瞬間」と調和せずに生きる心の状態であり、「いま」に対する無意識の「NO」であり、いまという唯一の現実から断絶してしまうのです。
「受け入れる」とはあきらめることではない
受け入れる=状況を認める、心を開くこと
「受け入れる」とは、行動の放棄や負けを認めることではありません。
それは、心を開き、状況を評価や判断をせずにそのまま認めることです。
抵抗せずに「あるがままに身を委ねる」ことは、内なる闘争を自分の意志でストップさせる行為であり、受容と許しの態度を意味します。
まず“はい(yes)”と言う
トールは、「いつでも今、この瞬間をイエスと言って抱きしめるのです」といってます。
イエスと言って物事を無条件に受け入れると、向かい風だった人生が突然追い風に変わっていくのを体験するでしょう。
抵抗せずに現実を受け入れたとき、あなたは意識的に行動できるようになります。
心の反応を止めることで、ネガティブ性から生まれる行動ではなく、洞察力から生まれた行動を取ることができるのです。
抵抗をやめると、思考が静まり“今”が見えてくる
抵抗をやめると、あなたは時間とエゴの解体につながる「いまに在る」状態へと移行します。
抵抗の放棄とともに、平安と静けさが訪れ、心の中にスペースが生まれます。
思考が静まった瞬間、内側から自然な判断や行動が生まれます。
行動は、過去の経験によるリアクションではなく、「大いなる存在」からの指示や洞察力によって自動的に導かれるものになります。
自分を責めずに現実と向き合う3つのステップ
苦しみから抜け出し、「いまに在る」意識を取り戻すための実践的なステップです。
「これは今こうなっている」と言葉にしてみる
まず、現実を評価したり分析したりせず、「これは今こうなっている」と言葉にしてみてください。
「感情を観察する者」としての立場に立つことで、感情との間に距離が生まれ、その支配から自由になることができます。
「うまくいかない自分」を敵にしない
失敗や情けなさ、そして自己批判の思考も、すべていまという瞬間の一部として優しく見つめましょう。
自分の過失として個人的に捉えることを控え、「これはエゴの声だ」と認識します。
自己批判ではなく、セルフ・コンパッション(自己への思いやり)を持つことが、真の変化を促します。
体の感覚に戻る
思考の渦から抜け出すには、身体の感覚に意識を戻すのが最も効果的です。
呼吸に意識を向けることで、思考の流れに隙間が生まれ、意識の光が輝き出します。
また、身体の中に流れる生命エネルギー(インナーボディ)に意識を集中させると、あなたは心とも身体とも同一化しておらず、いまこの瞬間に繋ぎ止めるアンカーとなります。
変えようとする前に、まず受け入れる
現実を否定したままでは、変化は起きない
思考の機能障害である「いまの拒絶」に取り組まない限り、問題はずっと一難去ってまた一難というパターンを描き続けます。
抵抗がある限り、宇宙はあなたの味方にはならず、ネガティブな状態のままどんな行動をとっても、さらなる外部からの抵抗にぶつかるだけです。
受け入れは“行動の始まり”を整える行為
「受け入れ」は、あなたが行動するのではなく、行動があなたを通じて起こるための準備を整える行為です。
落ち着いた意識状態から出る行動は、過去の経験によって条件づけられたリアクションではなく洞察力によるものであり、それが持続的な変化を生みます。
いまを肯定する力
「いま」を完全に受け入れた瞬間、不幸と苦悩はすべて消え去り、人生は喜びと安らぎと共にスムーズに流れ始めます。
「いま」をあるがままに受け入れること、それが人生の主要な目的であり、時間を否定しエゴを否定する行為なのです。
あなたが「いまに在る」意識で行動している限り、どんな些細な行動でも、高潔で愛が原動力になります。
どんな瞬間も“いま”の一部として抱きしめる
「うまくいかない」と感じる瞬間も、あなたの人生を形づくる出来事の中身にすぎません。
それを否定せず受け入れたとき、心は静けさと共に回復します。
人生の本質である大いなる存在は、どんな出来事によっても損なわれることはありません。
あなたが「いま」に在ることを選ぶと、エゴの支配は終わり、人生はシンプルで楽になります。
人生をイエスと言って無条件に受け入れましょう。そうすれば向かい風だった人生が突然追い風に変わっていくの体験するでしょう。
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