FAQ

よくないと分かっていても他人と比べることがやめられません。

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他人と自分を比べてしまうことがやめられません。
「比べても意味がない」とわかっているつもりなのに、SNSなどで誰かが楽しそうにしていたり、夢を叶えていたりしているのを見ると苦しくて気持ちが落ち込みます。
この思考を静めることはできるのでしょうか。

他人と自分を比較してしまい、苦しみや落ち込みを感じるというお悩みについて、エックハルト・トールの教えに基づき、その仕組みと解放への道筋を解説いたします。

比較によって生まれる苦しみは、あなたの「思考」と「偽りの自己(エゴ)」の性質から生じています。この思考の流れを静め、心の平安を取り戻すことは可能です。

比較によって苦しみが生まれる仕組み

SNSなどで他人の成功や楽しそうな姿を見て苦しくなるのは、あなたの「思考」が、その情報と自分を同一視し、「偽りの自分(エゴ)」を強化しようと働いているからです。

思考とエゴは常に比較の中に生きています。

エゴの仕組み

エゴとは、あなたが「私」だと思っている、思考が作り出した「幻の自己」です。
エゴは、自分を「形」や「概念」(持ち物、社会的地位、成功、容姿など)と同一化することで存在を保とうとします。

比較と優越感の欲求

エゴは常に比較の中に生きています。
他人にどう見られているかによって「自分が何者か」を決めようとします。
誰かの成功や所有物が自分より勝っていると感じると、エゴは脅威を感じ、想像上の自己が小さく縮んでしまうように感じます。

劣等感の裏にある願望

劣等感を抱いているエゴの奥には、必ず「優越したい」という強い願望が隠されています。
比較によって優越感か劣等感のどちらかが生まれますが、どちらも真の安心や満足は与えてくれません。

欠乏感の投影

エゴは、「私は不十分だ」「私は欠けている」という根強い感覚(欠乏感)に苛まれており、その穴を埋めようと他者や状況を利用します。
あなたが他人の成功を見て感じる苦しみや落ち込みは、「自分には不足がある」というエゴの根底にある不安が、外部の出来事に反応して表出したものなのです。

思考が過去と未来を作り、いまを失わせる

あなたが苦しいと感じる感情は、他人から直接与えられたものではなく、「いまの思考」が、他人の状況を「自分は不完全だ」という過去の物差しで解釈し、未来への不安を投影していることによって生み出されています。

すべての苦しみは、思考の中に、そして過去や未来にのみ存在しています
現実には常に「いま現在」しか存在しませんが、思考が過去や未来という幻想を作り出し、その幻想に意識を奪われて「いま」を失うことこそが、苦しみの根本原因なのです。

エゴは常に「いま」をゴール(未来)に到達するための価値のないちっぽけな踏み台とみなしてないがしろにします。
あなたが誰かの夢の達成を見て焦るのも、未来の「理想の自分」というゴールに執着するエゴの働きです。

比較と落ち込みの思考を静める方法

「比べても意味がない」と頭で理解していてもやめられないのは、その思考がエゴの無意識的なパターンだからです。
思考を静めるためには、思考と戦うのではなく、「気づき(アウェアネス)」の光を向けることが必要です。

ステップ1:思考の「聞き手」になる(観察)

比較の思考を止めるための第一歩は、その思考を「自分自身」だとみなすのをやめ、客観的に観察することです。

思考の声に耳を傾ける

頭の中で流れる「独り言」や「内なる会話」に、できる限り耳を傾けてください。
特に、「私は○○を持っていない」「私はあの人より劣っている」といった何度も繰り返されるセリフに注意を払いましょう。

批判しない

この声を聞く時には、あれこれ批判したり、分析したりせず、偏りのない心で行いましょう。
批判もまた、応戦という形の「思考の声」に変わりないからです。

「いまに在る」意識へシフト

思考を見張っていると、「独り言をする声」と「それを聞き、観察している本当の自分」がいることに気づきます。
この「観察者」に意識を向けることで、思考とは別の「高次の意識」が活動し始めます。
思考が活動を続ける夢の中の登場人物だとすれば、あなたは「夢を見ている自分」から「夢を見ていることを見ている自分」へと目覚めるのです。

ステップ2:感情をそのまま「受け入れる」

比較による苦しみや落ち込み(ネガティブな感情)が湧いたとき、それを排除しようとする抵抗をやめることが大切です。

抵抗をやめる

思考を止めようとする行為や、ネガティブな感情を排除しようとする抵抗は、かえって苦しみを強めてしまいます。
苦しみは、「すでにそうであるもの」に対する拒絶や抵抗によって生み出されているからです。

痛みに意識の光を当てる

苦しい感情が湧いてきたら、それを拒絶せず、ただ感じてください
感情を観察し、あるがままに受け入れることで、その感情はあなたを支配できなくなります。

身体感覚に意識を向ける

感情は、思考の状態に応じた体の反応として体に反映されます。
落ち込みや不安が体のどこで感じられているか(例えば、胸の圧迫感や胃の重さなど)に意識を集中させましょう。
身体に意識を向けることは、思考の流れにブレーキをかけ、「いま」に戻るための最も身近で確実な入口です。

ステップ3:内なる「存在」に根を下ろす

思考や感情から意識を引き離し、「いまに在る」状態を深めることで、あなたは真の自己、すなわち大いなる存在(Being)とつながります。

思考が止まり、無心状態が生まれると、あなたは普段は思考にかき消されている心の平安を実感します。
沈黙と平和こそが、あなたの存在のエッセンスです。

エゴは常に「もっと多くを求める」という欠乏感に基づいて行動しますが、「いまに在る」ことによって、あなたはすでに完全無欠であると気づきます。
その気づきこそが「真の豊かさ」であり、外の世界に何も求める必要がなくなります。

自分のアイデンティティを大いなる存在から引き出しているとき、あなたは欲望から解放され、他人との比較によって価値が決まるものではないという真実に気づきます。
そのとき、他人の成功も楽しそうな姿も、あなたの内なる平和を脅かすことはなくなるのです。

まとめ

他人との比較で苦しむのは、あなたが思考という道具に支配され、「偽りの自分」として生きているからです。
この思考の流れを静めることは、戦うことではなく、優しく気づきを向ける ことで達成できます。

「いまに在る」 練習を繰り返し、思考の声をただの「心の雑音」として観察するとき、あなたは自然に心の静けさと平和へとたどり着くでしょう。

比べる思考が起こっても、それに気づき、「いま」に戻ること。
これが、苦しみから解放され、すでにあなたの内にある愛と喜びに満たされた「本当の自分」を取り戻すための道なのです。

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