エックハルト・トールの教えにおいて、私たちの心の苦しみを持続させている主な原因は、エゴ(幻の自己)と、ペインボディ(痛みの身体)という二つの無意識のエネルギー構造にあります。
この二者は密接に結びつき、互いに依存し合うことで、私たちを「無意識の状態」へと引きずり込みます。
エゴとペインボディの関係を理解する
エゴ:思考が作り出した「偽りの自己」
エゴとは、思考と自分を同一視することで作られる「幻の自己」恐れと欠乏感があります。
エゴは、自分を名前、所有物、役割、見解といった「形(フォーム)」と同一化することで存在を保とうとします。
ペインボディ:過去の感情的な「痛みの塊」
ペインボディとは、過去に経験した心の痛みや苦しみがエネルギーとして心身に蓄積され、ひとつの「存在」のようになったものです。
それは、まるで心の中に潜んでいる「痛みの塊」のようなものです。
感情的な痛み(怒り、嫌悪、罪悪感、憂鬱など)が、長く抑圧されると、この感情的な残留エネルギーがエゴの養分となって生き続けるのです。
| 構造 | 正体 | 目的 | 燃料(糧) |
|---|---|---|---|
| エゴ | 思考がつくる「偽りの自分」(主人格) | 「私」というアイデンティティの維持 | 比較、批判、優越感、分離意識 |
| ペインボディ | 感情エネルギーの「寄生体」(痛みそのもの) | 自らの生存、痛みの再現 | ネガティブな思考、感情的な衝突 |
エゴとペインボディは、互いに協力し合い、ネガティブなエネルギーを供給し合うことで存在を維持しています。
ペインボディは「不幸依存症」であり、自分と同種のエネルギー、つまりネガティブな感情や思考だけを糧にするという原始的な知性を持っています。
エゴとペインボディの共謀
活性化の引き金と「思考の乗っ取り」
ペインボディは普段は眠っていますが、空腹になると糧を補充するために目覚めます。
誰かの言葉や些細な出来事が引き金(トリガー)となり、ペインボディが活性化し、強烈なネガティブな感情(痛み)が湧き上がります。
この時、ペインボディはエゴと結託し、あなたの思考を乗っ取ります。
通常、思考が感情を生み出しますが、ペインボディの場合は逆です。
ペインボディから発した感情が、あなたの思考をネガティブなものに乗っ取ります。
乗っ取られた思考は、あなた自身や人生、他人、過去や未来について、悲しく、不安で、怒りに満ちた物語を語り出します。
この物語は、過去の苦しみを「いま」に蘇らせる怨恨 となることもあります。
あなたはその歪んだ考えをすべて信じ込んでしまい、ペインボディがあなたを通じて息づいているため、痛みそのものを「喜び」と感じ、ネガティブな思考の流れを止めたいとは思わなくなります。
エゴは「被害者役」で糧を得る
この共謀の中で、エゴは「被害者」という役割を演じることで、ペインボディから供給されたネガティブなエネルギーを「自分というアイデンティティ」の強化に利用します。
被害者役は、同情や憐れみ、そして「自分の問題」への興味 という形で、他者から心理的なエネルギー(ネガティブな関心)を吸い上げようとします。
エゴは、アイデンティティの一部になった問題の終結を望みません。
なぜなら、問題が解決してしまうと、「人生や他人に不公平な目に遭わされている自分」という物語 が崩壊してしまうからです。
このように、エゴとペインボディは、思考と感情を駆使して無意識の悪循環を作り出し、あなたを「時間の世界」に縛り付け、真の自己である「大いなる存在」から引き離してしまうのです。
解放への道:観察と「いまに在る力」
この悪循環から解放される鍵は、「気づき(意識の光)」です。
ペインボディが活性化しているとき、「これは私ではなく、ペインボディが反応しているのだ」と認識し、思考と感情をただ観察することです。
判断したり分析したりせず、ただ「いまに在り」、内側を観察し続けるのが大切です。
あなたが「いまに在る」意識を保てれば、ペインボディと思考のつながりを断つことができます。
思考とのつながりを絶たれたペインボディはエネルギーを失い、やがて意識へと変容していきます。
痛みは意識の炎を燃やすための燃料に変わり、その炎はさらに明るくなります。
これが、苦しみという「非金属」を、意識という「黄金」に変える技術 なのです。
思考と感情の痛みの解放について、トールは次のように述べています。
「許しとは、すべての不満や痛みを手放すことです。不平や不満が無益で、偽りの自分を強化するだけだと気づいた瞬間、変化は自動的に起こります。」
エックハルト・トール


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