エックハルト・トールの教えにおいて、「楽しむこと」は、単なる趣味や娯楽を意味するものではありません。
それは、行動の結果に執着せず、行為そのものを目的とすることで、意識の光を人生に流し込むという、「目覚めた行動」の核心的なモードです。
この「目覚めた行動」は、意識のエネルギーが活動に流れ込む度合いに応じて、「受け入れる」「楽しむ」「情熱を燃やす」の三つのモードに分類されます。
この記事では、「目覚めた行動」におけるモードのひとつ、「楽しむこと(Enjoyment)」の概念に焦点を当てた解説をします。
行動そのものを楽しむ
私たちが仕事や日常のタスクを行う際、通常は「心理的な時間」に支配されています。
心は未来のゴールに焦点を絞り、「いま」の瞬間を「目標に到達するための価値のないちっぽけな踏み台」として扱ってしまいます。
この結果への執着はエゴの構造から生じるものであり、恐れや不満、怒りといったネガティブな感情を原動力にします。
しかし、私たちが行動を楽しむモードに入ると、このエゴのメカニズムが停止します。
楽しみのエネルギー
トールが説く「楽しみのエネルギー」とは、外的な出来事や達成によって引き起こされる一時的な快楽とは異なります。
楽しみは、あなたの中の深い部分から行動へと流れ込み、この世界に現れる意識の次元なのです。
この楽しみは、大いなる存在(ビーイング)のダイナミックな一面です。
宇宙の創造力がそれ自身を意識したとき、それは喜びとして現れます。
真の幸福は、形や達成、他者を通してはもたらされず、「いまに在る」ときに自然に立ち現れるものです。
行動そのものに喜びを見いだすとき、あなたは意識的であることの喜びを体験しており、人生に「生きがいがない」「退屈だ」と感じることはなくなります。
「どのように行うか」がすべてである
「楽しむ」モードに入るための鍵は、行動の優先順位を「何をするか」から「どのように行うか」へとシフトさせることです。
行動の結果だけにこだわってはならず、行動そのものに意識を集中させるのです。
この意識の集中は、意識がこの世界に入り込む通路となります。
行為そのものが目的となるため、空想したり、思い出したり、予測したりといった思考活動をする余裕がありません。
その代わり、意識が研ぎ澄まされた「いまに在る」状態が保たれます。
「いまに在る」意識で行動している限り、あなたのすることはすべて、どんな些細な行動でも高潔で、思いやりと愛が原動力になります。
人生の焦点を「いま」に置くとき、行動を楽しむ能力は劇的に高まります。
そのとき、退屈だったはずのことが、ストレスや苛立ちではなく楽しみの源に変わるのです。
日常生活を「楽しみ」に変える実践法
「楽しむ」モードは、特別な状況でなくても実践できます。
日常のシンプルな行為の中に、意識の光を注入するのです。
例えば、単純な行為を意識的に行うことで、その行為が「いまに在る」ための入り口になります。
- 食事のとき
よく噛み、味や香り、舌触り、噛む音といった感覚を丁寧に味わいながら食事をします。 - 歩くとき
一歩ごとの足裏の感覚に意識を向ける。 - 手の動き
手を洗うときに水の音を聞き、温度や感触を感じてみる。
これらの行動を「手段」ではなく「目的そのもの」として行うのです。
そうすることで、思考が止まり、行動の中に流れ込む意識の次元を体験し、自然に楽しみが生まれます。
もし、あなたがしている行動に対して「楽しむこと」も「受け入れること」もできないなら、その行動はすぐにやめるべきです。
なぜなら、それを続けることは、自分の意識の状態(苦しみ)に責任を取っていないことになるからです。
意識的であることの喜び
結果への執着を手放し、行動そのものに喜びを見いだす「楽しむ」モードは、エゴの支配から解放され、大いなる存在の力を行動に導き入れるための強力な実践です。
この喜びは、あなたの中にある愛や平和といった感情を超えた本質の表れであり、あなたが意識的であることの自然な報酬なのです。


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