エックハルト・トールは、現代において最も影響力のある精神的な指導者の一人です。
彼の教えの中心にあるのは、私たちの日常的な苦しみの原因は、「今この瞬間を生きていないこと」にあるというシンプルな真実です。
トールの教えによれば、私たちが「私」だと思っているものは、実は「エゴ」と呼ばれる「幻の自己」です。このエゴは、絶え間なく続く思考や、過去の経験から作られた概念(名前、職業、所有物、性別など)と自分を同一視することで存在しています。
しかし、思考やエゴは本当のあなたではありません。
真のあなたは、形のない生命(存在)であり、意識です。
エゴから解放され、この「今、ここに在る」存在と一つになることによって、すべての苦悩は消え去るというのがトールの核心的なメッセージです。
この記事では、ペインボディの影響下にある状態から脱却し、心の平和を取り戻すための3つの主要な実践ステップを解説します。
苦しみの塊「ペインボディ」の仕組み
エゴが生み出す最も根深い苦しみの形の一つが「ペインボディ(痛みの身体)」です。
ペインボディとは、過去に経験した感情的な痛みや苦しみがエネルギーとして心身に蓄積され、一つの「存在」のようになったものです。
ペインボディは、感情的な辛い体験を糧(エネルギー)にして生き続ける、いわば「精神的な寄生体」のようなものです。
ペインボディは通常は休眠していますが、ストレスや人間関係の摩擦、あるいは単なるネガティブな思考といった「引き金」によって目を覚まします。
ペインボディが活性化すると、あなたの思考を乗っ取り、悲しみ、怒り、不安といったネガティブな感情を増幅させます。
このとき、私たちは自分自身や人生について、悲惨で怒りに満ちた物語を語り出し、「不幸依存症」の状態に陥ります。
この悪循環から抜け出すためには、ペインボディと「自分」を同一視する関係を断ち切る必要があります。
ペインボディを癒す3つのステップ
ペインボディは、あなたが「いまに在る」という意識の光を当てることで、自然にエネルギーを失い、癒されていきます。
トールの教えでは、感情的な痛みに直面したとき、それを癒し、意識の光に変えるためのプロセスが提示されています。
ペインボディを癒すための3つの主要なステップは以下の通りです。
ステップ1:痛みに「気づき」、意識を集中させる
まず、怒りや不安、憂鬱、漠然とした不満といった感情的な痛みが湧き上がってきたら、それを否定したり、逃げたりせず、自分の内側、特に身体の中でどう感じられているかに意識を集中させます。
ステップ2:それを「ペインボディ」として認識する
次に、その感情的な痛みを「自分自身の本質」ではなく、「ペインボディが反応しているのだ」と認識します。この認識によって、あなたと痛みとの間に距離が生まれます。
ステップ3:「いまの経験」として、あるがままを受け入れる
そして、「いま、自分の内面にこの痛みがある」という事実を抵抗せずに受け入れます。
痛みを受け入れることは、弱さではなく、意識的な降伏(サレンダー)であり、真の強さです。
最も重要な実践:観察し、解釈しないこと
このプロセスにおいて最も大切なのは、「解釈しないこと」判断したり、分析したり、物語を作り出したりしてはいけません。
痛みを感じている間、あなたは「いまに在り」続け、ただ観察する人になります。
感情そのものは不幸ではありません。
感情に「不幸の物語」がくっついたときだけ、不幸になるのです。
あなたが思考と思考の間にある沈黙や内なる空間に気づき、ペインボディを意識の光で照らし続けると、ペインボディはエネルギーを失い、やがて意識へと変容します。
この変化は、苦しみという「非金属」を意識という「黄金」に変える古代錬金術であるとトールは説いています。
心の平和への帰還
私たちの苦しみの源は、絶え間なく続く思考によって作り出された「エゴ」という幻の自己と、過去の感情的な痛みが凝り固まった「ペインボディ」です。
ペインボディを癒し、エゴの支配から解放されるための鍵は、「いまこの瞬間」にあります。
トールの教えは、私たちが人生で探し求めている愛、喜び、心の平安は、遠い未来や外部にあるのではなく、すでに完全無欠な状態で、今この瞬間、あなたの内側に存在しているという真実を教えてくれます。
あなたという存在が、世界への最も貴重な贈り物なのです。
「悟りを開くとは、すべてをあるがままに、極上として受け入れることである」。
エックハルト・トール

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